小学校入学前の幼児と小学生では、意識の違いがあります。
学校では先生が生徒に教え、生徒は先生から教わるという作業を、子ども達が集団生活をしながら体得します。ですから、小学生以上の学生は、書道教室に行ったら、先生に言われた通りに練習して、正しくきれいに字を書くということが、「学ぶ」ということだとよくわかっています。
けれども、小学校に入学する前の幼児には「習う」=「教わる」「学ぶ」という概念がまだありません。幼稚園や保育園で先生の言う通りに行動し、それなりに集団生活上のルールを身につけますが、素直に覚えているだけです。例えば楽器の演奏やダンスや劇の台詞を覚えることもありますが、幼児にしてみれば、先生やお友達と同じことをしているだけなのです。それは真似であって学びではありません。
真似でもできるようになることは子どもにとって素晴らしい進歩です。
でも、残念なことにできるようになって楽しいと感じてはいるものの、どうしてやらなければならないのか、やるとどういうことに役に立つのか、覚えたことを次にどう活かすか、身につける(学ぶ)ことまではわかっていません。真似は一過性ですが、学びは記憶に残り、継続します。継続することで、応用され発展し、自己の成長になります。
書道教室では、字を学んでいただきます。学ぶということがどういうことか、もし小学生以上の兄姉がいらっしゃるお子さんなら、なんとなくわかるということはあるでしょう。
自分が書いた字を先生が直すという作業が、先生が教えることで、間違いを正すこと、よりきれいな形に近づけようとすることが、学ぶこと、だという理解をするには幼児には少し難しいことです。
その難しさを保護者の方に補っていただけば、幼児でも学ぶことができるようになります。
どうして先生が直すのか、先生が直した通りに練習すると「正しく」「上手になる」という説明は、家庭の環境で理解できることなのです。
先生の言う通りに練習すれば正しく上手な字が書けるようになると、先生が頭ごなしに説明しても幼児にはよくわかりません。なぜなら、幼稚園や保育園で、先生は、園児に指導し教えますが、「教わる」概念のない園児にしてみれば一緒に遊んでくれたりお世話をしてくれる人と認識されているからです。
ですから、幼児が先生に教わる習い事をする場合、ご家庭の補足がどうしても必要なのです。
また、別の面から、例えば、幼児は右手と左手がまだあやふやです。でも字の形を説明するときに左の線は斜めに、右は真っ直ぐに、などと説明することがあります。各ご家庭でお子さんの言語が独自にあるので、先生の説明をお子さんがわかりやすいようにご家庭の言葉に直していただく必要があります。
それで、当書道教室では、幼児のお稽古には保護者のお付き添いをお願いしております。
また、お付き添いの方にお机をご用意しますので、できればご一緒に習われることをお勧めします。お家の方が隣で練習され、先生から教わる姿をご覧になることで、自然に学ぶことがわかるようになります。お母様がただ見ていらっしゃるだけの時よりもはるかにお子さんにやる気がでるようで、前はほんの数枚だったのに驚くほどたくさん枚数を練習されるようになります。
ご家庭の環境があってこそお稽古ごとが生きてきます。また、そういうお子さんは力がしっかりついて自信をもって取り組むようになるので、どんどん上手になります。
「ご家庭の育児」あってこその「育字」です。
参考