マルチ商法の被害にあわないために




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                     マルチ商法の被害にあわないために
                                   
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                                                1993/Aug/15
                                                すずきひろのぶ
                                                hironobu@sra.co.jp




「この商品を買いませんか?会員になってもらえば割引が効きますし、さらに
あなたが会員を誘えば、さらにランクが上がり、割引率が上がったり、お金が
入ってきますよ。」なんて誘われた事がありませんか?これがマルチ商法と呼
ばれるものです。


マルチ商法とは
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昭和51年に作られた「訪問販売等に関する法律」の中ではマルチ商法の事を
「連鎖販売取引」といって厳しく規制しています。この法律の中でマルチ商法
は次の4つの用件を満たしたものと定義づけています。

        1)物品販売事業であること
        2)商品の販売業者を誘引すること
        3)特定利益を収受し得ることをもって誘引すること
        4)誘引されるものに特定負担をさせること


マルチ商法が社会問題になった昭和40年代後半では、この定義で当時のマル
チ商法は一旦は鎮火したのですが、その後、法の目をくぐってマルチ商法が流
行し昭和63年に一部改正となり当時問題となっていたマルチ商法の業者を取
締りました。

しかし、法律と悪質な業者とはイタチごっごです。言葉巧にあなたに誘うとき
に「連鎖販売取引にはあたりません」といっても、それは明確にマルチ商法で
はないという事ではありません。単に法の目をくぐっているだけです。過去の
例としては昭和59年秋に警察に摘発されたマルチ商法として有名だったベル
ギーダイヤモンド社は「訪問販売等に関する法律」ではなく、詐欺という名目
でした。(【注】判例ではベルギーダイヤモンドの組織はネズミ講であると認
定された。)


マルチ商法は法により規制が厳しい規制があります。

1)不当な勧誘の禁止
        違反者は一年以下の懲役または50万円以下の罰金

2)取引停止の処分
        適正を欠く勧誘行為が行われると判断した場合、通産大臣が停止を命令できる

3)広告の規制
        正確に商品の情報およびマルチ組織の情報を明示する義務がある
        違反者は10万円以下の罰金

4)書面を交付する義務
        マルチ商法の概要を記載した書面を交付する義務がある。
        違反者は10万円以下の罰金

5)クーリングオフ
        書面を交付した日、もしくは商品到着のどちらか遅い方から数えて
        14日以内であれば契約を解除できる。

6)報告おおよび立入検査
        通産大臣等は立入検査ができる。

と、いったように、実際には手かせ足かせがはめられています。事実上マルチ
商法は、ほとんど出ない状態になってるといっても過言ではありません。



なぜ抜け道が?
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現在の法律では次の方法が抜け道となっています。形式的に連鎖販売取引とな
らず各種の規制を擦り抜けているものはマルチまがい商法と呼ばれています。
これは本質的にはマルチ商法となんら変わりありません。

        1)物品を販売しない方法
                例えば物の代わりに会員資格等を売ります。

        2)商品の再販売を取らない方法
                本部が直接に商品を販売する紹介販売の形態を取ります。

        3)特定負担の限度を越えない方法
                特定負担の金額は法律で2万円となっています。そこで、
                組織の加入を2万円以下に設定し商品の購入を別にする
                ことによって逃れます。

        4)法人への販売とする方法
                マルチ商法の各種規制の対象となるのは店舗によらない個人
                への販売に限定されています。そこで、会員に会社の形態を
                取らせたり、ランクの上に昇格するには会社にしたりします。


過去の具体例として、豊田商事株式会社の関連会社のベルギー・ダイヤモンド
や、寝具販売のジャパン・ライフ株式会社のようなものがありました。


マルチ商法の本質とは何か
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マルチ商法の本質とは個人の資金を巻き上げるための人狩り的な組織であるこ
とです。親が子を、またその子がまた子を作り、そしてその子が....といっ
たように木構造に増え、その親であることが色々利益に結びつくことです。こ
の利益は子が直接に親に利益を支払うことでなくても、マルチ組織から利益を
得られる形でも同じです。


勧誘の巧みさ、複雑さ
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数々あるのですが、ここで典型的なものを紹介しましょう。

        
        パーティー商法
                近所の奥さんから無料で料理を教えますということでホーム
                パーティーに参加しないかと誘われて気軽に参加してしまう。
                そこで、誇大な効能や作り話の効果を聴かされ高価な家庭用品
                を思わず買わされてしまう。

        催眠商法
                説明会に誘われ、言葉巧みに商品を説明し、会場を熱狂的な
                雰囲気に盛り上げて興奮状態にし、気持ちが高ぶらせその気
                にさせて会員にしてしまう。


もし被害にあったら
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色々な法律によって消費者は守られています。これらの法律を根拠に自分を守
ることができます。

        1)訪問販売等に関する法律
        2)詐欺・強迫による契約の取消、錯誤による契約の無効
        3)公序良俗違反による契約の無効
        4)不法行為に基づく損害賠償請求
        5)独禁法違反、景表法律違反
        6)無限連鎖防止法違反
        7)各種法律違反(薬事法、称号詐称等)
        8)未成年の場合(民法四条による取消)


しかし、実際は
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マルチ商法に引き込まれた場合、相手はその道のプロですから、素人が一人で
太刀打ちできるとは考えないほうがいいでしょう。そもそも、被害にあった人
は、その説得に一度は負けてしまった人です。一人で交渉にいっても「頑張り
が足りないからだ、頑張れば必ず儲けられる」などと説得されて帰ってくるの
がオチです。

こちらもその道のプロのアドバイスを受けるべきです。各地の消費者センター
(無料)、役所で催される無料法律相談、弁護士会の法律相談(有料/無料)、
を利用されるといいでしょう。もちろん弁護士に相談(有料)し、一緒に戦っ
てもらうこともよい方法でしょう。巻末に相談窓口の電話番号のリストを挙げ
ておきます。


クーリングオフ
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クーリングオフとは、訪問販売や通信販売等によって購入のちにキャンセルす
ることができる制度です。猶予期間は通常の訪問販売は7日間、マルチ商法の
場合は14日です。しかし、マルチ商法を行っているものがあっさり自分がマ
ルチ商法をしていると認めるとは思えません。したがって、7日間と考えた方
がいいでしょう。この7日間とは、申込みまたは契約を締結した日を含めてで
す。クーリグオフの条件は書面により相手に伝える事によって有効になります。
一番よい方法は内容証明郵便を使うことです。

消耗品以外は使ってしまってもクーリングオフができます。例えば鍋や包丁と
いったものは、相手が「一度使ってしまったので、売り物にならない」といっ
ても台所用品は法律で訪問販売の規制の対象と指定されていますので、使って
もクーリングオフができます。

訪問販売と通信販売の規制の対象となっているものは43品目あります。これ
らの中身は訪問販売されている殆どの品目をカバーしているといっていいでしょ
う。洗剤、コンドームや健康食品といったものは消耗品として扱われ、利用し
た分を差し引いた形でクーリングオフされます。この43品目は消費者問題の
ほとんどの本にはリストアップされていますので詳細は本にあたってください。

クーリングオフの期間を過ぎていたとしても、悪質な商法に対しては前記に挙
げた法律を適用することによって解約する事ができます。


是非とも一度は本を
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このようなマルチ商法など悪質な商法に関しての本は書店や図書館にいけばた
くさんあります。ここでは概要だけを短い文章で書きましたが、本には実例や
対処方法など具体的に詳しくかかれています。どなたも是非とも一度は悪質商
法に関する本を読んで頂きたいと思います。


今回の文章を作るにあたり参考にした本のリストです。

[1]消費者問題の法律相談,監修 木元,自由国民社,1800円,ISBN
4−426−22001−7

[2]消費者問題読本,巻 正平,東洋経済新報社,2000円, ISBN
4−492−08258−1

[3]くたばれ!悪徳商法,古川 和,日本経済評論社,1400円,ISB
N4−8188−0247−6

[4]悪質商法 被害例と救済法,監修 木元,自由国民社,1500円,I
SBN4−426−27301−3


相談先
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たくさんありますが、いくつかピックアップした形で載せたいと思います。消
費者問題の本の巻末の殆どに、各地消費者センター、都道府県の窓口、政府の
窓口の住所と電話番号が載っているので、詳しく知りたい方はそちらを参考に
してください。

消費者センター
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日本各地に300件ぐらいありますが、その中でいくつか選んで載せてみます。
最寄りの消費者センターを紹介してくれるでしょう。

        北海道 011−221−0010
        仙台 022−261−5161
        新潟 025−267−4196
        東京 03−3235−1151
        名古屋 052−583−0999
        大阪 06−344−0999
        広島 082−222−5522
        福岡 092−411−4400


国の消費者行政窓口
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20近くありますが、その中から2つを挙げてみます。

        経済企画庁
                国民生活局消費者行政第一課/同第二課
                03−3581−0261

        公正取引委員会
                事務局取引部取引課
                03−3581−3371


都道府県・政令都市行政の窓口
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おおよそ60以上ありますが、東京、名古屋、大阪を挙げてみます。

        東京都生活文化局消費者部計画調査室
                03−3201−0259

        愛知県生活環境部県民生活課
                052−961−2111

        大阪府生活環境部消費生活課
                06−941−0351

弁護士会
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東京だけ載せます。

        東京 03−3581−2201
        東京第一 03−3580−5271
        東京第二 03−3581−2255


最後に
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     *****自分を守るのは最終的に自分でしかありません*****

今回はマルチ商法に関して書きましたが、世の中には星の数ほど悪質な商法が
あります。誰もが常に狙われています。自分が賢くならない限り、いつかは被
害者になるでしょう。また無知であるが故に加害者の立場になるかも知れませ
ん。くどいようですが、消費者問題に関わる本を一度は読み知識を得て、賢い
消費者となってください。


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本文は、改変をしない条件で再配付可能です。




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